社長の「右腕」に向いている人は、すぐそばにいる

社長はいつだって不安と戦っている

経営とは、不安との戦いです。

人を1人雇用すれば、数百万円が人件費や教育費となって出ていきます。しかし、その従業員と企業風土が合わず、本来のパフォーマンスが発揮されないかもしれません。教育コストをかけても、すぐに辞めてしまうかもしれません。

設備を導入すれば、一気に数千万円の借入金を背負うことになります。でも必要な売上が上がるとは限りません。もし資金が底をついても、新たな融資を受けられるとも限りません。

お客様に、競合他社ではなく自社を選んでもらう為にどう差別化していくか、社長は従業員に示す必要があります。しかし社長が示した方針が正解とは限りません。仮に正しかったとしても、それを実現できるかどうかはまた別の話です。

社長には”右腕”が必要

このように、経営をしていくうえで悩みはつきないものです。しかし多くの不安を抱えていても、社長はいつも毅然としていなければなりません。社長が弱音を吐いていたら、従業員も不安になってしまいます。

そんなとき、社長を支えてくれる「右腕」となる人材がいれば、どんなに頼りになるでしょうか。

優秀な人材は、中小企業には来てくれない

とはいえ、優秀な人を雇って「右腕」になってもらう、というのは難しいと考えるべきです

社長は肌で感じておられると思いますが、優秀な人材はなかなか中小企業に来てくれません。2021年版 中小企業白書によると、ほとんどの大卒予定者は大企業への就職を希望している、という統計が出ています。中小企業が求人を出しても、大卒予定の就職希望者数は圧倒的に少ないのです。

出所:2021年版 中小企業白書
資料︓リクルートワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査」
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/PDF/chusho/03Hakusyo_part1_chap1_web.pdf

これは、中途採用でも同じことです。ここ数年の有効求人倍率は1.6~1倍程度で推移しています。求職者一人に対して1~1.6件の求人が出ているという意味ですね。企業側から見た場合、一人の求職者を巡って激しい競争が繰り広げられることになるわけですが、前述のとおり、大卒予定者であの有様です。中途採用においても、優秀な人材が自社に来てくれる確率は低いと考えるべきでしょう。

出所:2021年版 中小企業白書
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/PDF/chusho/03Hakusyo_part1_chap1_web.pdf

”右腕”候補は、社長のすぐそばにいる

それでは、中小企業の社長の「右腕」となってくれる人材はいないのでしょうか?

そんなことはありません。人材が限られている中小企業において、社長に寄り添えるパートナーが2人存在する、と私は考えています。

  • パートナーとなりうる1人目は、社長の兄弟です。

たとえば、お兄さんが社長で、弟さんの専務と助け合って経営をしているようなケースですね。

ご兄弟は、社長と同じ環境で生まれ育ち、お互いの性格をよく知っている間柄です。社長の志のよき理解者となるでしょう。些細なことでもお互いに相談しやすいですし、兄弟相手なら、ある程度は弱音を吐くことが許されます。

兄弟は、似ている面がある一方で、違う面もあります。たとえば、お兄さんは人当たりのいい性格で営業が得意など「攻めの経営」が得意であるのに対し、弟さんは冷静に物事を見る力があり技術面のスキルが高いなど「守りの経営」が得意である、などですね。

性格の違いを活かし合える「よきパートナー」として、二人三脚で頑張っておられる会社も多いです。

  • パートナーとなりうる2人目は、社長夫人です。

理由は2点あります。

まず1点目に、気持ちの面で社長を支えることが出来るためです。

社長夫人は、社長が好きで一緒になったのですから、社長の志を応援し、力になりたい気持ちも大きいでしょう。また、社長がどういう性格でどんな長所や短所があるのか長年付き合う中でよく知っています。社長が心を許し、愚痴や弱音をこぼせる数少ない相手です。それだけでも、社長にとってはありがたい存在のはずです。

2点目に、社長夫人は、お金や戦略の面で社長を支えることが出来るためです。

社長夫人は、経済的な面でも社長と運命共同体です。事業が傾けば家庭も傾きますから、会社について特に真剣に考えるでしょう。

また、中小企業(特に小規模企業)では、社長夫人が経理を担当していることが多いです。言うまでもなく、資金管理は会社にとって生命線です。キャッキュが回るように資金繰り管理を行うのは当然のこと、決算書を分析して今後どのような手立てを打つべきか助言できるのは、経理担当者である社長夫人です。

このような理由から、社長夫人は、経営戦略を立てる際の「参謀」として活躍できる人材と言えます。

右腕といっても、活躍の内容は様々

社長の右腕と言っても、その活躍の内容は様々です。

  • 経理担当者の立場を活かし、社長の参謀として活躍する
  • 営業と製造など、社長と役割分担する
  • 業務効率化などにより、事業のボトルネックをなくす
  • 従業員の「お父さん」や「お母さん」として、皆の心の拠り所となる
  • 秘書として、スケジュール管理や社交面で社長を補佐する
  • 事業部長として、事業の立案・運営そのものを担う

など、様々な活躍方法があります。

どれを目指すべきか?に正解はありません。

ご兄弟・社長夫人のタイプや向き不向きにもよりますし、その会社の社風にもよります。

大切なのは、本人が右腕人材であることを自覚し、その役割に徹することです。

その際は、社長と話し合って、

  • 社長が何を期待しており
  • パートナーは何が出来るのか

をすり合わせてくださいね。

役割が噛み合ってこそ、社長の「右腕」となるのですから。

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この記事を書いた人

林 めぐみ
林 めぐみ
中小企業診断士
経理・財務スキル検定 レベルA
日商簿記2級/基本情報技術者/FP2級

得意な業種:製造業・卸売業  得意なテーマ:経営全般・財務・IT

IT企業でのシステム運用を経て、小規模製造業の取締役を11年間経験。3代目後継者である夫のビジネスパートナーとして尽力し、経営企画からバックオフィスまで幅広い経験を積む。小さな会社でもできるIT活用や財務管理など、実践的なアドバイスが得意です。貴社の「明日の一手」=「あすのて」を導きます。

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