倒産防止共済・小規模企業共済のデメリットや注意点

経営セーフティ共済(倒産防止共済)や小規模企業共済は、将来への備えをしながら税制メリットもある、小規模事業者にとって有益な制度です。

しかし、ものごとには必ずデメリットがあります。

今回は、2つの共済のデメリットや注意点についてお話します。

2つの共済制度の「デメリットや注意点」

経営セーフティ共済(倒産防止共済)と小規模企業共済に共通するデメリット・注意点があります。

早期に解約すると損をする

どちらの制度も、早期に解約すると損をします。具体的には、12か月未満で解約すると掛捨てになってしまいます。

さらに、倒産防止共済は、40か月未満で任意解約をすると、掛金が80~95%しか返ってきません。また、小規模企業共済は、240か月未満(20年未満)で任意解約をすると元本割れしてしまいます。(※廃業や法人の解散、病気や怪我が理由で役員を退任した場合等は、共済金が支払われるため元本割れはしません。)

経営セーフティ共済(倒産防止共済)小規模企業共済
12か月未満で解約すると掛捨てになってしまう
40か月未満で任意解約をすると、掛金は80~95%しか返ってこない240か月未満で任意解約をすると元本割れする
備考:得意先の倒産時、最大で掛金の10倍まで共済金を借りられる制度備考:小規模事業の役員が自分自身の退職金等を積み立てる制度

そのため、長期的に無理のない金額で、掛金を払い込んでいく必要があります

もし掛金の納付が苦しくなった場合は、掛金の減額を検討しましょう。最後の手段として掛止めという方法もあります。

経営セーフティ共済(倒産防止共済)小規模企業共済
5,000円単位で、
最低5,000円/月まで減額可能
500円単位で、
最低1,000円/月まで減額可能
掛金総額が掛金月額の40倍以上に達している場合、掛金の払込みを止める(掛止め)ことができます。また、共済金の借入れを受けた場合も、6か月間、掛金の払込みを止めることができます。掛金の納付が著しく困難な場合は、半年または1年間、掛金の払込みを止める(掛止め)こともできます。

ただし掛止めした期間は共済契約期間から除外されるのでご注意ください。

解約手当金等の受取時に課税される

どちらの制度も、解約手当金を受け取ると課税される、という点に注意してください。さらに小規模企業共済は、共済金の受取時にも課税されます。

  • 課税対象
経営セーフティ共済
(倒産防止共済)
小規模企業共済
解約手当金

※当制度の共済金は「借り入れる」ため、共済金には課税されない
解約手当金、共済金

※ただし、共済金の受取りは退職所得控除や公的年金等控除が受けられるため、税負担が軽減される

両制度の掛金は、損金計上または所得控除が可能で、節税効果があります。しかし、解約時等の受取時には、益金または所得扱いとなるため、課税対象となります。つまり、これらの共済は、税制上は課税の繰延べをしているだけにすぎないのです

節税効果に目がくらんで加入をすると、解約時等に思わぬ税金がかかりますのでご注意ください。

以上が、2つの共済に共通するデメリットです。

それぞれの共済をよく確認してみると、特有の注意点もあります。

一つずつ見ていきましょう。

「中小企業倒産防止共済」の注意点

共済金を借りると、払い込んだ掛金が消滅する

経営セーフティ共済(倒産防止共済)の「共済金の借入れ」は、無担保・無保証人・無利子で借りることができます。しかし、共済金を借りると、借りた金額に応じて払い込んだ掛金が消滅してしまいます。

共済金の借入れは無利子です。ただし、借入れ後は、共済金の借入額の10分の1に相当する額が払い込んだ掛金から控除されます。

経営セーフティ共済 – 共済金について
https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/about/proceed/index.html

こういう言い方をすると、ひどい制度に聞こえますが、それは違います。

たしかに、実質的には借入れの10%相当額を没収されることになります。ですが、いざというとき金融機関が融資をしてくれる保証はありません。これに対し、倒産防止共済のメリットは、得意先が倒産したときに、ほぼ確実に被害相当額を借してくれることです。そのための保証料みたいなものだ、と考えると腑に落ちるのではないでしょうか。

一時貸付金を借りていると、共済金が減額される

経営セーフティ共済(倒産防止共済)の「一時貸付金」は、得意先が倒産していなくても、解約手当金の95%を上限として借入れできる制度です。ここで注意点があります。

共済金の貸付を受ける場合に一時貸付金を借りていると、貸付けを受けることとなった共済金の額から一時貸付金の額が控除されます。

たとえば、一時貸付金を100万円借りているときに、3000万円の貸倒れが発生したとします。この場合、2900万円しか共済金を借りられないことになります。

条件によっては、共済金の借入れができない

経営セーフティ共済(倒産防止共済)は、条件によっては共済金の借入れができないことがあります。

  • 得意先の「夜逃げ」は、対象外

経営セーフティ共済(倒産防止共済)の「倒産」には定義があります。具体的には、「夜逃げ」は倒産に含まれないため、注意が必要です。

共済金の借入れが受けられる取引先の倒産共済金の借入れが受けられない取引先の倒産
・法的整理
・取引停止処分
・でんさいネットの取引停止処分
・私的整理
・災害による不渡り
・災害によるでんさいの支払不能
・特定非常災害による支払不能
夜逃げ
出所:経営セーフティ共済 – 制度の概要 https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/about/features/index.html
  • 加入後6か月未満の倒産は、対象外
  • 経営セーフティ共済(倒産防止共済)に加入後、6か月未満に発生した倒産
  • 得意先の倒産日までに、掛金を6か月分払い込んでいなかった場合

などは、共済金を借入れることができません。

  • 少額すぎる貸倒れは、対象外

経営セーフティ共済(倒産防止共済)の目的は、連鎖倒産を防ぐことです。そのため、少額すぎる被害(貸倒れ)の場合は、共済金を借入れることができません。共済金はおおむね50万円から借りられる、と覚えておくといいでしょう。

以下のいずれかに該当する場合は、共済金の借入れができません。

(中略)
■借入額が少額であって、次の[1]また[2]のいずれの額にも達しないとき
1. 50万円(共済契約締結時の掛金月額が5,000円であり、かつ共済契約が効力を生じた日から共済金の借入手続きの日までの期間が6か月以上10か月未満である共済契約者にあっては、5,000円に掛金の納付をすべきであった月数を乗じて得た額の10倍に相当する額)
2. 共済契約者の月間の総取引額の20%に相当する額

経営セーフティ共済 – 共済金について
https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/about/proceed/index.html

  • 倒産から6か月を経過すると、対象外

経営セーフティ共済(倒産防止共済)は、倒産日から6か月を経過した場合には共済金の借入手続きを行うことができません。

倒産のゴタゴタで手続きが後回しになってしまった……とならないように注意してください。とはいえ、現実的にはすぐに共済金を借り入れすると思いますので、この点はあまり心配しなくても大丈夫だと思います。

小規模企業共済にも、特有の注意点があります。

「小規模企業共済」の注意点

掛金の増額・減額・掛止めをすると、元本割れすることがある

小規模企業共済は、掛金を変更・掛止めすると、元本割れのリスクが高くなります。

中小機構のホームページには、このように書かれています。

※掛金納付月数は掛金月額500円を1口とした掛金区分ごとに数えます。
加入期間が240か月以上でも、途中で掛金を増額/減額した場合で掛金区分ごとの掛金納付月数が240か月を下回ったときは、任意解約した場合に受け取れる解約手当金が掛金合計額を下回ることがあります。

小規模企業共済 – 共済金(解約手当金)について
https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/about/proceed/index.html

つまり、「当初からの加入期間」と「掛金区分の納付月数」は異なるということです。

  • 掛金を途中で「増額」すると、増額部分は、増額したときから納付月数のカウントが始まります。
  • 掛金の「減額」や「掛止め」をすると、減額部分や掛止めした全額について、納付月数のカウントが止まります。

このような事情から、一番当初からの加入期間が240か月(20年)を越えていたとしても、掛金の増額・減額・掛止めをした部分の加入期間が20年に満たず、元本割れしてしまうことがあるのです。

元本割れを防ぎたければ、以下に注意する必要があるでしょう。

  • 掛金の増額
     増額してから240か月加入し続ける
  • 掛金の減額や掛止め
     減額や掛止めをしなくてすむように、当初から、無理のない金額を掛金とする

最後に

今回は、経営セーフティ共済(倒産防止共済)と小規模企業共済の「デメリット」や「注意点」についてお話ししました。

細かな注意点はあるものの、これら2つの制度は、小規模企業の経営者の大きな味方になってくれます。

  • 経営セーフティ共済(倒産防止共済)は、もしもの備えとして、
  • 小規模企業共済は、老後の備えとして、

とても有効な手立てとなるでしょう。

特に、運転資金が多額になりがちで貸倒れリスクが高い「小規模製造業」 や「小規模卸売業に」とって、節税をしながら貯金ができ、必要があれば一時的に借入れもできる点は、とても有効だと考えます。

デメリットや注意点をきちんと把握したうえで、ぜひ制度を活用していただければと思います。

この記事を書いた人

林 めぐみ
林 めぐみ
中小企業診断士
経理・財務スキル検定 レベルA
日商簿記2級/基本情報技術者/FP2級

得意な業種:製造業・卸売業  得意なテーマ:経営全般・財務・IT

IT企業でのシステム運用を経て、小規模製造業の取締役を11年間経験。3代目後継者である夫のビジネスパートナーとして尽力し、経営企画からバックオフィスまで幅広い経験を積む。小さな会社でもできるIT活用や財務管理など、実践的なアドバイスが得意です。貴社の「明日の一手」=「あすのて」を導きます。

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