最短10分間でOK!経営自己診断ツール『シグナル』

経営者は、孤独な職業だと思います。経営について相談できる相手が限られていて、日々悶々とされているのではないでしょうか。

特に小規模企業は、経営コンサルタント等の専門家に相談したいと思っても、資金的・時間的に敷居が高いと思います。専門家相手だと「厳しいことを言われそうで怖い」という理由で尻込みしてしまうことがあるかもしれませんね。

だから、もし、経営状況を自己診断できるとしたら嬉しいですよね。しかも無料で、最短10分間で診断できるとしたら、やってみたいと思いませんか?

今回は、経営状況自己診断ツール『シグナル』についてご紹介します。

経営診断ツール『シグナル』

『シグナル』は、政府系金融機関の日本政策金融公庫(日本公庫)が提供しているツールです。

ツールは、日本公庫WEBサイトの各種書式ページからダウンロードできます。

ページの下の方に「経営者のみなさま向けの参考資料」として、ひっそりとリンクが貼られているので、気づきにくいかもしれませんね。

自己診断ツールの概要

自己診断ツール『シグナル』は、ワークシート形式になっています。

  • ステップ1:経営状況の自己診断チェック(点数化)
  • ステップ2:経営状況に関する気づき

の2段構成です。

以下の画像は、製造業向けの自己診断チェックです。質問に答えていくだけで、自社の経営状況を「見える化」することができます。私もご支援先の経営者さんと一緒に取り組んでみたところ、設問に答えるところまで5~10分くらいで終わりました。

出所:https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/signal_seizo_210401.pdf

「気づき」ノートを書くときのポイント

経営状況を点数化できたら、ぜひ、気づきノートにも取り組んでみましょう。

  • 内部環境:自社に関する気づき
  • 外部環境:自社を取り巻く経済や社会、仕入先や販売先、競合他社や新規参入

について、気づきを書き出します。

その際のポイントは、

売上拡大・利益向上に繋がる「強み」や「事業機会」は何か?

を考えることです。

自己診断では、経営の状況を点数化します。そのため自社の「弱み」に目が行ってしまいがちです。しかし、どんなに素晴らしい会社にも問題点や課題はいくらでもあります。仮に弱みがあったとしても、売上や利益の足かせになっていなければ良いのです。

問題点を潰すことに躍起になるよりも、自社ならではの「良さ(強み)」を強化して事業機会を掴む方が生産的です。まずは、自社の強みに注目して気づきを書き出してみましょう。自社の強みとは、売上や利益が生まれる理由となっていることです。

たとえば・・・

事業活動「強み」の例(売上や利益が生まれる理由)
仕入専門性の高い業者から、質の良い材料を購入している。
製造表彰を受けた熟練の職人が加工をしており、品質の高さに定評がある。また、昨年に加工機を最新設備に更新し、生産性が高まった。
販売社長自らが営業活動をしており、成約率が高い。
アフター
サービス
不良品があれば、即日で良品を再納品している。
販売先
(得意先)
〇〇県一帯から受注している。
競合や
新規参入
当社は小回りがきき、競合となる企業と相見積もりになっても勝てる。

などです。
自己診断で得点が高かった項目について、過去にお客様から褒められたことや、実績に繋がっていることを思い出すと、書きやすいですよ。

自社の強みに気づけたら、やっと自社の弱みや課題に目を向けられます。

自社の弱みとは、自社の強みを活かす際に、足を引っ張っていることです。

たとえば先ほどの例を見てみましょう。

事業活動「強み」の例
(売上や利益が生まれる理由)
「弱み」の例
(強みの足を引っ張っていること)
仕入専門性の高い業者から、質の良い材料を購入している。品質に定評があるため売上には繋がるが、材料費が高くて利益を圧迫している
製造表彰を受けた熟練の職人が加工をしており、品質の高さに定評がある。また、昨年に加工機を最新設備に更新し、生産性が高まった。ベテラン職人が高齢化しており、5年後の作り手がいない
また、設備投資の借入金返済が資金繰りを圧迫しており、売上向上策の予算がとれない。
販売社長自らが営業活動をしており、成約率が高い。社長が他の業務で忙しいと、営業活動がストップする
アフター
サービス
不良品があれば、即日で良品を再納品している。顧客と繋がっているにも関わらず、顧客の意見を収集する仕組みがなくリピート注文率も把握していない
販売先
(得意先)
〇〇県一帯から受注している。納品先が遠いため時間がかかる
近年、取引先数が増えていない。
競合や
新規参入
当社は小回りがきき、競合となる企業と相見積もりになっても勝てる。相見積もりに勝つために、少々無理な価格でも受注している

このように、自社の強みに先に気づいておくと、重要度が高い課題があぶり出されます。

どんな企業でも、弱みや課題は探せば無限に出てきます。経営診断ツール『シグナル』に、”(注)すべて埋める必要はありません ” と書かれているのはそのためです。

『シグナル』の目的は、重要度が高い課題に気づくことなのです。

出所:https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/signal_seizo_210401.pdf
(強調箇所は筆者による)

まとめ

経営状況自己診断ツール『シグナル』は、経営状況を簡単に見える化してくれるツールです。

  • ステップ1:経営状況の自己診断チェック(点数化)
  • ステップ2:経営状況に関する気づき

と順番に質問に答えていくだけで、貴社の経営状況を自己診断することができます。

自社の課題をあぶり出すときに大切なことは、自社の強みに気づき、強みの足を引っ張っている事柄を書き出すことです。そうすれば、重要度の高い経営課題をあぶり出すことができます。

簡単に自社の課題を「見える化」できますので、ぜひ取り組んでみてください。

取り組んでみて、よく分からない点がありましたらご相談くださいね。

この記事を書いた人

林 めぐみ
林 めぐみ
中小企業診断士
経理・財務スキル検定 レベルA
日商簿記2級/基本情報技術者/FP2級

得意な業種:製造業・卸売業  得意なテーマ:経営全般・財務・IT

IT企業でのシステム運用を経て、小規模製造業の取締役を11年間経験。3代目後継者である夫のビジネスパートナーとして尽力し、経営企画からバックオフィスまで幅広い経験を積む。小さな会社でもできるIT活用や財務管理など、実践的なアドバイスが得意です。貴社の「明日の一手」=「あすのて」を導きます。

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