中小企業向けクラウド会計って、結局どれがいいの?【2021年版】 MFクラウド会計、会計freee、弥生会計オンラインを比較しました

中小企業(法人)向けのクラウド会計ソフトのうち、代表的なものは次の3つです。

「・・・で、結局、どのクラウド会計がいいの?」というご相談をよく受けます。

結論から言うと、

  • インストール型ソフトから乗り換えるなら「MFクラウド会計」か「会計freee」の2択
  • それぞれの特徴があるので、貴社の希望に合わせて選択すべし

と、私はお答えしています。

というわけで、各クラウド会計ソフトの特徴についてまとめました。

特徴まとめ

各クラウド会計の特徴は、以下のとおりです。

MFクラウド会計会計freee弥生会計オンライン
概要経理経験者向け、
ベーシックなつくり
初心者向け、
効率化に特化
経理経験者向け、
シンプル
自動仕訳


連携データから複合仕訳不可
口座連携
通販系不可
手動仕訳


経費精算機能なし
(レシート取り込みのみ)
債権債務管理
資金繰り表
消費税見込額の計算
固定資産台帳
プラン・価格(税抜き)スモールビジネスプラン
年払い35,760円
ミニマムプラン
年払い23,760円


ベーシックプラン
年払い47,760円
ベーシックプラン
年払い30,000円
(初年度15,000円)
機能比較表[URL][URL][URL]
MFクラウド会計会計freee弥生会計オンライン

(2021年4月現在)

概要

まず、全体の概要です。

「MFクラウド会計」は、良くも悪くもベーシックな会計ソフト、といった印象です。
簿記の知識がある人なら、スムーズに使い始められるでしょう。請求書機能等は別アプリに切り離されているため、クラウド会計アプリそのものは、シンプルな作りになっています。また、新機能の搭載は手堅く行われる印象です。

一方、「会計freee」は、
経理初心者にも分かりやすい・業務効率化のため自動化する、という方針に舵を振り切っています
口座機能やタグ機能など、独自の設計思想で作られているため、従来型の会計ソフトに慣れた人は戸惑うと思います。多機能で画面がごちゃごちゃしており、操作を覚えるまで”迷子”になりやすいです。また、freeeは開発スピードが早い反面、新機能が告知なく搭載・廃止されることがあるため、驚かされることがしばしばあります。

とはいえ、どちらのソフトも、操作に慣れてしまえば大きな問題にはならないでしょう。

なお、「弥生会計オンライン」のことはいったん忘れてください。

自動仕訳や口座連携

クラウド会計の魅力は、何と言っても、「自動仕訳機能」でしょう。

「会計freee」には、完全に自動で仕訳登録をしてくれる機能があります。
それに対して「MFクラウド会計」は、仕訳の推測まではしてくれるものの、仕訳確定は人の手で行う必要があります。

業務効率化を追求するなら、「会計freee」がオススメです

一方、「口座連携機能」は、若干の差ではありますが「MFクラウド会計」に軍配が上がります

「MFクラウド会計」は、製造業ならおなじみの「MonotaRO」の明細取得に対応しています。また、クレジットカードの親子カードの明細にも対応しています。これに対して「会計freee」では、親子カードの取り込みに対応しておらず1枚のカードしか取り込むことができません。取り込めなかったカードについては、手動でデータを用意してアップロードする必要があります。

上記の問題を飲み込めるのであれば、どちらのソフトを使っても問題はないでしょう。

MFクラウド会計会計freee
自動仕訳
仕訳推測機能のみ

完全自動で仕訳可能
未決済取引の消込は、ベーシックプランから利用可
「MonotaRO」の明細取り込み
対応

非対応
クレジットカードの親子カード
取り込み可

主契約など1枚のカードのみ取り込み可
連携データ自動取得
電子証明書連携ソフトは、ビジネスプランから利用可

口座残高と帳簿残高の突合
ビジネスプランから利用可

(2021年4月現在)

手動仕訳

クラウド会計といえども、一部の仕訳は手動で行う必要があります。

従来型の会計ソフトのように、仕訳帳形式で仕訳入力をしたい場合は、「MFクラウド会計」がおすすめです。

「会計freee」は、連携した口座から仕訳を起こす設計思想のため、仕訳帳形式での仕訳入力には対応していません。(売上帳や現金出納帳のように連続登録できる方式はあります)

MFクラウド会計会計freee
振替伝票
仕訳帳形式での入力
(連続登録機能はある)
仕訳辞書(取引テンプレート)
経費精算機能
スマホアプリあり

スマホアプリあり

(2021年4月現在)

債権管理・資金繰り管理

債権管理や納税額、資金繰り管理をしたいなら、「会計freee」がオススメです。

「会計freee」には、標準で「債権・債務管理」がついています。
売掛金の回収日、買掛金の支払日を教えてくれるので、手続き漏れを防げます。

また、「会計freee」のベーシックプラン以上では、月次資金繰りシミュレーションを行うことができます。

出典:https://support.freee.co.jp/hc/ja/articles/900001189466

さらに「会計freee」には、消費税法人税額を試算できる機能があります。

出典:https://support.freee.co.jp/hc/ja/articles/900002371863

ご承知のことと思いますが、企業にとって「利益」と「資金」は別物です。
儲けが出ていても、運転資金や税金を考えると「資金繰り」が回らないことは十分ありえます。

freeeの上記機能を使うことによって、債権回収や納税額の考慮がしやすくなり、先んじた資金繰り管理ができるようになります。

MFクラウド会計会計freee
債権・債務管理
(回収日・支払日管理)

ビジネスプランから、債務管理が利用可

年齢表は、ベーシックプランから利用可
資金繰り表
キャッシュフローレポートはある

資金繰りレポートがある。
資金繰りシミュレーションは、ベーシックプランから利用可
消費税納付見込額の計算
税区分集計表から手動計算する必要あり

法人税の試算も可能

(2021年4月現在)

固定資産台帳

会計ソフトで固定資産台帳を作成したいなら、「MFクラウド会計」のほうが良さそうです。

「会計freee」は、固定資産台帳をPDF出力(印刷)することができません。

MFクラウド会計会計freee
固定資産台帳

PDF出力不可

(2021年4月現在)

プラン・価格

価格は、機能面の違いがあるため、一概に費用対効果を評価しづらいです。

プランは「自社に必要な機能が搭載されるかどうか?」で検討するのが良いでしょう。

  • 「MFクラウド会計」の場合、
    特に理由がなければ「スモールビジネス」プランがオススメです。

  • 「会計freee」の場合、
    自動化の恩恵を受けるためには「ベーシック」プランがオススメです。
MFクラウド会計 会計freee 弥生会計オンライン
法人向けプラン
(税抜き)
  ミニマム 
年払い23,760円、
月払い2,380円
セルフ 
年払い26,000円
(初年度0円)
スモールビジネス
年払い35,760円、
月払い3,980円
ベーシック
年払い47,760円、
月払い4,780円
ベーシック(サポート付) 
年払い30,000円
(初年度15,000円)
ビジネス 
年払い59,760円、
月払い5,980円
 
 備考 ※請求書発行、経費精算、勤怠管理、給与計算、社会保険、マイナンバー管理、債務支払サービスのパック ※人事労務freeeは、別途契約する必要があります。   

(2021年4月現在)

余談:「弥生会計オンライン」を除外した理由

「弥生会計オンライン」が気になっていた方、おまたせしました。そしてごめんなさい。

「弥生会計オンライン」を除外した理由は、「できないことが多すぎるため」です。

具体的には、

  • 自動仕訳や口座連携
    • 口座連携データから複合仕訳ができない
    • 仕訳の自動登録ができない(仕訳推測機能はある)
    • 通販系サイトと連携ができない(MonotaRO、アスクル、Amazonなど)
    • 給与計算サービスとの連携ができない
  • 手動仕訳
    • 仕訳帳形式の入力形式がない
    • 経費精算機能がない(レシート取り込みのみ)
  • 債権管理・資金繰り管理
    • 債権・債務管理ができない
    • 資金繰り表機能がない
  • その他
    • 補助元帳の印刷ができない
    • 税理士の招待機能がない(弥生会計AEとの連携のみ)

などです。(2021年4月現在)

「弥生会計オンライン」のいい点は、独自の設計思想かつ機能がシンプルなところです。しかし、裏を返せば低機能ということです。

個人事業主向けならそれでもいいのかもしれませんが、法人にとっては必要な機能が不足している、と考えます。

まとめ

一口にクラウド会計と言っても、機能面に各社の特色があることがお分かりいただけましたでしょうか。

  • 「MFクラウド会計」は、クラウド会計のメリットを取り入れつつ、スタンダードな会計処理を行うことができます。
  • 「会計freee」は、従来の会計ソフトの常識を打ち破った機能が搭載されており、効率的な会計処理を行うことができます。

どちらが良い悪い、ではなく、それぞれの個性があるのです。

クラウド会計を検討する際は、まず「自社の状況」を明らかにしましょう。

  • 貴社の経理体制(経理に関わる人たち/経費精算や給料支払も含む)
  • 貴社の経営課題
  • 経営課題に対応するための、財務管理の方針

などです。

現状が明らかになれば、会計ソフトを導入する目的」が定まり、自然と、どのクラウド会計を使うべきかが決まるはずです。

場合によっては「当社には、インストール型の会計ソフトのほうが向いている」という結論になることもあるでしょう。

大切なのは、貴社の経営課題を解決できるソフトを導入することです。

ぜひ、目的(貴社の経営課題)を念頭に置いて、検討してみてください。

これからクラウド会計を導入される製造業・卸売業の方のご参考になれば幸いです。

※記事の誤りなどがございましたら、コメント欄でご指摘いただけますと幸いです。

この記事を書いた人

林 めぐみ
林 めぐみ
中小企業診断士
経理・財務スキル検定 レベルA
日商簿記2級/基本情報技術者/FP2級

得意な業種:製造業・卸売業  得意なテーマ:経営全般・財務・IT

IT企業でのシステム運用を経て、小規模製造業の取締役を11年間経験。3代目後継者である夫のビジネスパートナーとして尽力し、経営企画からバックオフィスまで幅広い経験を積む。小さな会社でもできるIT活用や財務管理など、実践的なアドバイスが得意です。貴社の「明日の一手」=「あすのて」を導きます。

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