キャッシュレス決済で経理・会計を楽にしよう
キャッシュレス決済を使うと、経理・会計業務を効率化できるってご存じですか?
キャッシュレス決済とは
キャッシュレス決済とは、お札や小銭などの現金を使用せずにお金を払うことです。具体的には、クレジットカード、デビットカード、交通系等のICカード、QRコード決済などがありますね。
2020年6月までのキャッシュレス・消費者還元事業や、キャッシュレス決済事業者の競争により、一気にキャッシュレス決済が普及しましたね。コロナ禍で不衛生なお金に触りたくないニーズも、その流れを後押ししているでしょう。たとえば最近では、郵便局でもキャッシュレス決済が使えるようになりました。
キャッシュレスで「経費を支払う」
キャッシュレス決済は、法人の経費支払いでも利用することができますね。
法人の経費をキャッシュレス決済で支払うと、以下のメリットがあります。
- 手元の現預金残高に左右されない
言うまでもないことですが、財布に現金がなくても支払いをすることができます。
また、クレジットカードは後払い方式です。利用金額の引き落としは約1か月先ですので、資金繰りの調整に役立ちます。 - 経費精算が不要になる
従業員にキャッシュレス決済の権限を持たせておけば、立替そのものが無くなります。
つまり経費精算が不要になります。 - クラウド会計と連携することで、仕訳登録が効率化される
「クラウド会計ソフト」と「キャッシュレス決済の利用明細」を連携しましょう。貴社では、定期的に購入するものはありませんか? たとえば、切手代・社用車のガソリン代・サブスクリプション契約のソフトウェア、店舗で調達する材料などです。そのような取引は、自動仕訳機能 または 仕訳推測機能により、半自動的に処理が可能です。経理業務としてはレシートを整理するだけで済みます。
【具体例】以下は、クラウド会計「freee」にクレジットカードの利用明細を取り込んだ様子です。これらの仕訳は自動的に行われています。
法人の場合、経理を楽にすることを考えるならば、法人用のクレジットカード(の子カード)を利用するとよいでしょう。他の手段でも構いませんが、以下のデメリットがあります。
デビットカード | 銀行口座から即時に代金が引き落とされるため、セキュリティ上、法人で使うには不向き(従業員による不正使用を阻止できない) |
交通系ICカード | 店舗で利用すると、利用明細に店名が表示されないことがある(⇒ 交通機関での利用だけに留めるほうがよい) |
QRコード決済 | 法人でアカウント作成や運用がしづらい。また、クラウド会計と連携できないことが多い。 |
キャッシュレスは「売掛金回収」に向くか?
ところでキャッシュレス決済は、事業者間の売掛金回収に向くのでしょうか?
結論としては、
「多くのBtoB取引の場合、代金回収にキャッシュレス決済は向かない」と私は考えます。
なぜなら、売上高の3~7%の決済手数料が取られるからです。
具体的に計算するとこんな感じになります。その恐ろしさがお分かりいただけるかと思います。
ただし、特定の条件に当てはまる場合は、キャッシュレス決済で売掛金回収をするメリットがあります。具体的には次のとおりです。
- 顧客1件あたりの請求額が10,000~20,000円前後で、振込手数料を当方負担している
- 不特定多数(数十件以上)の企業と取引しており、入金管理が煩雑になっている
- 顧客企業から見たときの「経費支払い先」に該当する
- BtoB向けの店舗等、その場で決済するタイプの業態(掛取引ではないということ)
1件あたりの請求額が10,000~20,000円前後の場合は、決済手数料(3~7%)を取られても、銀行振込手数料を当方負担するのと変わりません。また、数十件以上の不特定多数の企業と取引している場合は、後述するクラウド会計で入金管理をすることが難しくなってきます。その場合はキャッシュレス決済で請求管理をするメリットがあります。
一方、顧客企業から見たときの「経費支払い先」や「店舗」に該当する業種を営んでいる場合は、顧客ニーズの観点から、キャッシュレス決済を導入せざるを得ない状況になるかもしれません。この場合は、メリットというよりは、自社の競争力強化のための投資的側面が強くなります。
売掛金回収にキャッシュレス決済を利用するメリット
キャッシュレス決済で事業者間の代金(売掛金)を回収するメリットは次のとおりです。
- 入金管理を簡素化できる
Square や Stripe 等、顧客単位で請求管理ができる決済システムがあります。銀行口座等で入金明細を確認する必要がなくなるため、入金管理がシンプルになります。「取引相手が不特定多数 かつ 取引先が多く、入金管理が大変すぎる」という場合には有効な手段となります。
- 短い期間で代金回収が可能(な場合がある)
自社の入金タイミングを考えると、キャッシュレス決済は最短翌日に入金されるものがあります。一方で顧客側は、クレジットカードで支払えば、引き落としは約1か月先です。このタイムラグを利用すれば、自社側と顧客側、双方の資金繰りを悪化させること無く、早期に代金回収できる場合があります。ただし、顧客との話し合いが必要となるでしょうから、限られた状況での利用方法になります。
なお、キャッシュレス決済業者が「貸倒リスクが軽減できる」とうたっている場合ありますが、掛取引の場合はリスク軽減効果はほとんどありません。なぜなら、請求書を発行してすぐにキャッシュレス決済をしてもらわなければ意味がないためです。
デメリット
- 売上の3~7%程度の決済手数料を取られる
(その結果、貴社の粗利益が、売上の3~7%相当額減るということ)
これが最大かつ大問題のデメリットです。
上記で計算したとおり、売上高の3~7%も手数料を取られてはおおごとです。日々、原価低減や生産性向上に勤しんでおられるのに、その苦労が無駄になりかねない手数料です。
ゆえに、BtoB事業の場合、よほどのメリットや事情がない限りはキャッシュレス決済で売掛金を回収するのは避けたほうがよいでしょう。
回収管理は、クラウド会計でできる
回収管理(入金管理)を効率化したいなら、キャッシュレス決済を検討する前にできることがあります。インターネットバンキングを導入してクラウド会計を活用しましょう。入金管理を大幅に効率化できます。
クラウド会計には、債権管理機能や自動仕訳機能が備わっているものがあります。
たとえば、会計freeeには、売掛金の自動消込機能があります。「カ)アスノテセイサクショ」などの振込明細から、自動的に得意先を判定して売掛金を消し込んでくれるのです。また、「入金管理レポート」もあるため、回収漏れを簡単に管理できます。
私のご支援先企業でも、実際にfreeeの自動消込機能を使っていますよ。その会社は顧客企業が20~30社ありますが、入金確認は数分で終わるそうです。クラウド会計は利用料が固定ですから安心です。
まとめ
キャッシュレス決済をうまく使うと、経理・会計業務を 大幅に効率化することができます。
- 経費支払いは、クレジットカード払いにすると、大幅な業務効率化になります。
- 一方で、売掛金回収は、事情がない限りキャッシュレス決済を使うべきでありません。
というのが、現時点での私の結論です。
とはいえ、キャッシュレス決済のトレンドは広がっていくでしょう。
将来、状況が変わる可能性もあります。
キャッシュレス決済で、貴社の事業を効率化できるといいですね。
この記事を書いた人
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中小企業診断士
経理・財務スキル検定 レベルA
日商簿記2級/基本情報技術者/FP2級
得意な業種:製造業・卸売業 得意なテーマ:経営全般・財務・IT
IT企業でのシステム運用を経て、小規模製造業の取締役を11年間経験。3代目後継者である夫のビジネスパートナーとして尽力し、経営企画からバックオフィスまで幅広い経験を積む。小さな会社でもできるIT活用や財務管理など、実践的なアドバイスが得意です。貴社の「明日の一手」=「あすのて」を導きます。
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