中小企業こそ「キャッシュ・フロー計算書」を作ろう

貴社では、キャッシュ・フロー計算書を作成されていますか? 

「はい、作成しています!」という中小企業はおそらく少ないでしょう。なぜなら、キャッシュ・フロー計算書は上場企業に義務付けられている書類であり、非上場の企業に作成義務はないからです。しかし、中小企業だからこそ、キャッシュ・フロー計算書を作成するメリットがあります。

「なんだか難しそう……」と感じる方のために、キャッシュ・フロー計算書の簡易作成ツール(Excel)」を中小企業庁が用意してくれていますので、記事の最後でご紹介しますね。(お急ぎの方は、目次の「キャッシュ・フロー計算書の作り方」をクリックしてください)

「キャッシュ・フロー」とは何か

まず、用語の確認をしておきます。

「キャッシュ・フロー」とは、「一定期間の現金の流れ」という意味です。具体的には、事業活動や借入れで得た資金から、外部への支払や返済を差し引いて、手元に残る資金を指します。年間キャッシュフローは、1年間で増えた(減った)現金のことですね。

年間キャッシュフロー額 = 期末の現金残高 − 期首の現金残高

しかし、現金の変動額だけ見ていても「現金がどんな要因で増減したのか?」までは分かりません。その変動要因を明らかにするのが、「キャッシュ・フロー計算書」です。

中小企業こそ「キャッシュ・フロー計算書」を作るべき理由

冒頭でも書いたとおり、上場会社はキャッシュ・フロー計算書の作成が義務付けられています。ですが、中小企業にこそ、キャッシュ・フロー計算書が必要です。なぜなら、中小企業は財務基盤が弱く、資金をシビアに有効活用していく必要があるからです。

厳しい経営環境を生き残り、安定的に事業を発展させていくためには、主体的に資金繰りを行わねばなりません。しかし決算書を見ても、資金が何によって生み出され、また、何に使われたのかが、パッと見では分かりくいです。これでは資金を有効活用しづらいですよね。そこで資金の活用状況を分かりやすく整理してくれるのが「キャッシュ・フロー計算書」なのです。

「キャッシュ・フロー計算書」とはこんな表です

キャッシュ・フロー計算書とは、以下のようなものです。

とはいえ、いきなりこれだけを見ても、ちんぷんかんぷんな方も多いと思います。

CF計算書

というわけで、もう少し簡単にしてみました。

キャッシュ・フロー計算書の金額欄は、
現金を増やす効果は正の値(+)、現金を減らす効果は負の値(-)で記載されます。

キャッシュ・フロー計算書の読み方

企業活動における現金の動きは、営業活動投資活動財務活動 の3つです。

  • (Ⅰ)営業活動は、事業で稼いだ金額を表します。
    この合計額は、プラスである必要があります。もしマイナスの場合は、事業が赤字であるか、回収・支払サイトや在庫のせいで資金が流出していることを表します。

  • (Ⅱ)投資活動は、事業用の固定資産へ投資した金額、または、固定資産を売却した金額を表します。
    中小企業の場合、投資活動の額はマイナスになることが多いです。もしプラスの場合は、固定資産を売却してお金を作ったことを表します。

  • (Ⅲ)財務活動は、借入れした金額、または、返済をした金額を表します。
    この合計額がプラスのときは借入れが増加しており、マイナスのときは返済が進んでいることを表します。

  • (Ⅰ)営業活動と(Ⅱ)投資活動を合計した金額を「フリー・キャッシュフロー(FCF)」と言います。フリー・キャッシュフローは、(Ⅲ)借入金返済の原資になるため、プラスである必要があります。もしマイナスの場合は、事業で大赤字を出したか、大きな設備投資等を行ったか、のどちらかが考えられます。

(再掲:簡単にしたキャッシュ・フロー計算書)

現金を増やす効果は正の値(+)、現金を減らす効果は負の値(-)で記載されます。

  • まず、営業活動投資活動財務活動 の3つの金額がプラスかマイナスか、を確認しましょう。

    営業活動(Ⅰ)がマイナス
    投資活動(Ⅱ)がプラス
    財務活動(Ⅲ)よりも、フリーキャッシュフロー(Ⅰ+Ⅱ)が少ない

    などの異常値があれば、すぐに原因究明が必要です。

  • 次に、具体的にはどの小項目から「資金が流出」しているのか?を確認しましょう。

特に、営業活動による資金流出があるときは、資金が有効活用できていないおそれがあります。
具体的な理由を特定し、早急に手を打ちましょう。

たとえば、

  • 当期純利益:当期純利益が少なすぎる →利益増加のために、客単価アップや業務効率化の方策を検討する
  • 運転資金の変動額:売掛金・受取手形や在庫が増えた →顧客に対し回収条件改善の交渉をする
  • 運転資金の変動額:在庫が増えて、資金が寝ている →発注タイミングや発注数(生産数)を見直し、在庫削減を図る

などです。

キャッシュ・フロー計算書の作り方

キャッシュ・フロー計算書は、当期/前期の貸借対照表と、当期の損益計算書から作ることができます。

毎年、決算書が完成したら、キャッシュ・フロー計算書を作成してみるといいですね。

中小企業庁が「キャッシュ・フロー計算書の簡易作成ツール(Excelファイル)」を用意してくれているので、活用しましょう。ツールは、中小企業の会計ツール集のなかに含まれています。

▼「キャッシュ・フロー計算書の簡易作成ツール」はこのようなシートになっています。
Excelの白色の欄に決算書の内容を入力すると、キャッシュ・フロー計算書が自動生成されます。

出典:中小企業の会計31問31答 平成21年指針改正対応版)ツール集 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaikei/tools/2009.htm

▼完成形は、このような書式になります。

出典:中小企業の会計31問31答 平成21年指針改正対応版)ツール集 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaikei/tools/2009.htm

まとめ

中小企業は資金力が乏しいため、主体的な資金繰り管理を行って、手元にあるお金を有効活用したいものです。資金がどこから生まれ、どこに消えているのかを把握するためには、キャッシュ・フロー計算書が役に立ちます。

キャッシュ・フロー計算書は、経営改善を行うべきポイントを客観的に表しますので、的確に対応することが可能になります。

貴社もぜひ、毎年キャッシュ・フロー計算書を作成してみてください。
経営課題が浮き彫りになりますよ。

この記事を書いた人

林 めぐみ
林 めぐみ
中小企業診断士
経理・財務スキル検定 レベルA
日商簿記2級/基本情報技術者/FP2級

得意な業種:製造業・卸売業  得意なテーマ:経営全般・財務・IT

IT企業でのシステム運用を経て、小規模製造業の取締役を11年間経験。3代目後継者である夫のビジネスパートナーとして尽力し、経営企画からバックオフィスまで幅広い経験を積む。小さな会社でもできるIT活用や財務管理など、実践的なアドバイスが得意です。貴社の「明日の一手」=「あすのて」を導きます。

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